インストラクションの目的、解釈
ガニエ・IDの原理、に書いた内容は医療インストラクショナル・デザインでは次のように解釈できると思います。
医療インストラクションの目的は、医療に関わるすべての人々の学習を助け、学習者の生活や人生の質・満足度を向上することにあります。
- 患者・家族は医療者のインストラクションに支えられてQOLを向上します(生活行動、服薬や受診行動の変容により)。
- 医師、看護師、歯科医師、薬剤師、メディカルスタッフはインストラクションや認知的方略を使って、プロとしての発達や自己実現を達成します。
医療インストラクションにより、学習者は効果的・効率的・魅力的な方法でそれぞれのゴール達成を目指します。
- 医療インストラクションがなくても人はそれぞれに知っていること・できること・行動の方法などを変化させていきますが、知識、パフォーマンスのやり方や結果などにバラツキが生じます(システムとして成果が上がりにくくなる)。またプロとして発達する場合にもとても長い時間がかかってしまいます。
- 医療インストラクションは「医療職の発達を意図的に支援する目的的な活動を構成する事象の集合体」になります(教室、研修だけでなく、実習やOJT、第3の場での交流などの場が対象)。意図的な支援により、プロとして発達する効果(能力を確実に獲得する)・効率(いままでに比べ圧倒的に短い時間で・少ないリソースで)・魅力(学習・研修や仕事に没入する)を高めることが可能になります。
医療インストラクションは、学習者の頭の中(内側)で起こる事象(学習活動に注意を向ける、考える、リハーサルする、振り返るなど)に働きかけるために、学習者の外側の減少をデザインします(注意を向けやすいようなプレゼンテーションを行う、考えに集中できるように学習環境を整える、ツールを準備してリハーサルを支援する、対話形式で振り返りを助けるなど)。
- 教員やインストラクターは学習者の内側で起こる事象に直接働きかけたり、コントロールすることはできません。それができるのは学習者自身です。
- 教員やインストラクターの講義や説明は外側で起こる刺激になります。それが学習成果をあげるためには学習者の内側の準備が整っている必要があります。
- 学習者の内側の状態をモニタできなければ、内側で処理される刺激を外部から与えることはできないでしょう。